2月10日の松音日記

◯要旨

「子供が可愛いかった」を2645字で表しただけ。

 

 

早起きして勉強のためにミスドに行った。

 

この世には誘惑が多すぎる。

 

文明が産んだ快楽が、法の目を掻い潜り人が狂わないギリギリのラインで刺激してくる。

 

目から、耳から、鼻から、皮膚から、舌から、五感を通じて24時間攻めてくる。

 

勉強とはつまるところ欲望のコントロールだ。あらゆる欲望を絶ち、制御し、往なし、共存することで脳に無限に注ぎ込まれる欲望のインポートの隙間に知識をねじ込む。

 

僕は勉強が出来ない。勉強ができない上に日焼けスポーツ美少女にも巨乳小柄眼鏡美少女にもモテない。ダメだ。

 

だがダメな奴はダメなりにやり方がある。五感を刺激する欲望のうち味覚だけ妥協すればいい。勉強しながら甘味を食すことで他の欲望を抑えるのだ。

 

そう、だからミスドだ。我ながら。賢いやり方だ。

 

で、だ。何が言いたいのかというと、ミスドにいた子供が最近数字を覚えたのか、ありとあらゆるものを数えていた。可愛い。それを逐一母親に報告するのだ。とても可愛い。すごい。冒頭の勉強についての長い文章何も関係ない。これが日記だ。

 

 

昼飯としてマクドナルドへ行った。正直午前中にドーナツを食べて腹が減っていないのだが、今後のスケジュール的に何か食べておかないと後悔すると踏み、何より身体が塩分を求めていたので短時間で食せるマクドナルドへ行った。マクドナルドのハンバーガーとポテトの持つ塩分は非常に多い。具体的な量は知らないが、きっと塩だけまとめたらケーキを作っている時みたくドン引きする量の塩分を摂取していると思う。

 

身体が塩分を求めていた。摂取した大量の糖分を中和するかのように求めていた。それが非常に頭の悪い間違った感覚だとしても求めていた。

 

で、だ。何が言いたいのかというと、店内で食事をするための席を探しにきた子供が踊るのがマイブームなのか、空いている席を見つけた途端同行する父親に向けて“踊りで”席が空いていることを伝えたのだ。可愛い。何故踊ったのかわからないがとても可愛い。すごい。塩分についての長い文章何も関係ない。これも日記だ。

 

 

昼から夕方まで数合わせの4人目として友人とボードゲームカフェで遊び、ブロックスとゾンビタワー3DとSplendorとドミニオンで遊んだ。楽しかった(日記)

 

夜から通っている総合格闘技のジムに行った。僕が所属しているジムは上の階が合同レッスン(?)用のフロアになっており、下の階は自主トレ用のフロアになっている。レッスンは19時からなのだが、ジムに着いたのは20時頃だったので下のフロアで自主トレをすることにした。

 

フロアには小学校低学年の兄弟と思しき二人が防具をつけてスパーリングをしていた。

スパーリングといってもリングは無いので、トレーニングタイマーを使って時間いっぱい殴り合うというものだ。

 

小学生同士とはいえ子供の喧嘩などではない。完璧ではないにしろガード行為は行っているし、僕に知識が無いので怪しいのだが柔術の投げ技も絡めていることから本格的に総合格闘技をやっているのだろう。素直に感心した。

 

ただ問題は、兄と弟の間に明確な実力差があることだ。年齢的なものよりも、経験・技術的な面で明確に弟が負けていた。ぶっちゃけ弟がボッコボコにやられていた。言動や行動から兄が手を抜いているのはわかったが、それでもなおワンサイドゲームだった。

 

その兄弟に何があったのかは知らないが、二人を見ている母親はかなり厳しく、弟を「練習不足だから一方的にやられるのだ」と叱っていた。事情を知らないため口を出すようなことはしなかったが、兄から一方的にボッコボコにやられた上で母親から叱られる弟は見ていてとても可哀想であった。

 

だが母親が弟に「一発も当てられていないじゃない」と言った時だった。兄が口を挟んだ。

 

「そんなことない。こいつも何発か俺に当ててるし」

 

兄が弟を庇ったのだ。兄は別にいじめるために弟をボッコボコにしていたわけではないのだ。スポーツだ。そうだ。格闘技とはスポーツなのだ。暴力ではないのだ。人間が己の肉体でもって戦う神聖かつ最もスポーツのイデアに踏み込んだ最高のスポーツなのだ。健全なる精神は健全なる肉体に宿る。

 

この兄は小学生でありながら公正で高潔で高貴なスポーツマンシップを持っていたのだ。ってか兄弟愛だ。僕は感動した。美しい。なんて美しいんだ。最高にクールだ。

心の内でこの圧倒的に健全なる感動に高ぶりながら、無関心な素振りでクールにその迸る熱きパトスをサンドバッグに打ち込んでいた。

 

それからブザーで二人のスパーリングは終わった。7ラウンドこなしていたらしい。小学生で7ラウンド。1ラウンド3分で20分以上も戦っていたのだ。子供の体力すげーな!

 

練習が終了し、二人が防具っていうかヘッドギアを外した。子供用のヘッドギアだけが安全面を考慮しそういうものなのかは知らないが、正直端から見ると顔は全くわからない。

 

弟がヘッドギアを外した姿を見て驚いた。なんと涙でくしゃくしゃになっていたのだ。

そりゃそうだ。当たり前だ。防具をつけていたとは言え、ほぼ一方的に攻撃を受け続け、その上に母親から厳しい言葉を浴びせられていたのだ。誰だって泣く。

 

だがこの弟は泣きながらも鳴き声を声に出さず、ひたすらに7ラウンド立ち続けたのだ。戦い続けたのだ。凄い。いや、本当に凄い。並大抵の根性ではこんなこと出来ない。僕だったら絶対に無理だ。3ラウンドくらいで座り込んで泣きじゃくっていただろう。

 

弟よ。君は強い。間違いなく強い。その根性は本当に立派だ。兄もそれをわかっていたのだ。わかった上で戦っていたのだ。なんだこの兄弟は。美しい。美しすぎる。感動した。もう本当に感動した。感動しすぎて二人をいますぐ抱きしめて全力でありとあらゆる要素を肯定してあげたかった。感動をありがとうと最大限の賞賛を送ってあげたかった。コンビニでそこそこ高いプリンとか勝ってあげたかった。フルボトルとか欲しかったら買ってあげたかった。

 

だが僕はクールは男。そんなことしたら翌日の朝刊の地方ニュース欄に小さく掲載されるもしもしポリスメン案件だ。ぐっと堪えた。遠くで眺めているだけでそれでいい。

こんな一時の感動で逮捕されるのはまずい。今日び小学生は防犯ブザーを慣らすだけでいとも簡単に大人の人生を終わらせられる。銃刀法が産んだ第二の凶器だ。

 

トレーニングを終え、シャワールームに行くと先程の兄弟が一緒にシャワーを浴びていた。

 

先にシャワー室から出てきた兄が僕を見て言った。

 

「いやーん!へんたーい!」

 

G A M E O V E R