ファストライフ

遥か未来、ファストフードやファストファッションのように「ファストライフ」の概念が生まれた。

最新の科学技術と輪廻転生の宗教観をベースに、遺伝子を操作して成長と寿命のサイクルを高速で回すようになったのだ。人類史の加速が始まった。

歴史とはいわば次の世代へのステータス引き継ぎだ。
最新の学習技術で“最適な育ちかた”を学んだ人類はサイクルを重ねるたびに合理的にハイスペックに育っていく。

文明も高速で発展する。
超高速で歴史は進む。
強くてニューライフ。
超高速で回転し出した歴史はあらゆる非合理性を削り取る。
それでも僅かに人間性を残したまま、人類というタンブルウィードは歴史の荒野を進む。


高速で過ぎ去る人生にも当然失敗は起きる。人間である限りヒューマンエラーは起きる。
高速で回転する歴史でも神の手に守られた戦争とヒューマンエラーとガンとエイズは削り取れなかった。

でも大丈夫。

今失敗しても次の人生ではきっと上手くやれる。次に成功すればいい。

まぁ今回の人生は運が悪かったと思って諦めよう。

安心して。

最近の安楽死装置は性能が良い。

人類は疲弊した。効率化を極め、1つのミスが死を意味する人生に疲弊した。
ゆとりがほしい。
ゆとりがほしい。
1つのミスで終わらない人生がほしい。
合理的休暇以外の非合理的休暇がほしい。
資本主義が到達した超然的共産主義以外のイデオロギーがほしい。
ゆとりがほしい。


低温に設定した水槽に身体を浸す。埋め込んだ金属端子のパルスが徐々に体感時間を引き延ばしていく。
さぁ産まれ直そう。
冗長な世界へ。
非合理的な世界へ。
文明レベルを落とした世界へ。
肉体と一緒に記憶は置いていく。
一切のアドバンテージを置き捨てていく。

プログラムを設定する。機械が動き出す。

時代は―――2018年